お見合いの達人
「イタっ!」

何か固いものを踏んでしまったらしく、

痛みが走った。

見るとストッキングが切れ、

木の実みたいなものの先が見事に足の裏に刺さっていた。

ちょっとした切り傷なのに、妙に痛くて、

ベンチに座って携帯のウェットシートで足の裏を拭った。

「せめてミュールはけばよかった。

 馬鹿な私。」

「ああ、運悪いね。

 杉の実踏んじゃった?」

は?

真っ黒な顔した男が、

口ばっか白く、

二カッと笑っていた。


「あいつら近くの公園で、杉の見拾ってきて投げっこして遊んでるから、

 うん悪くそいつ踏んじゃったんだよ。

 それ尖ってるから痛いっしょ?」

「あー棚……俊……」

しまった。

印象が顔の黒に塗りつぶされて、名前すら忘れつつある。












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