お見合いの達人
偶然は得てして繋がってやってくるもの。


「おせーよ」

関係者通用口で不機嫌そうに口をとがらせている男。

「木原弟……」

「なんだよそれ、藤吾だろちゃんと名前で呼べよ」


「藤吾君あのさ、私疲れてんのよ」

「俺は腹減ってんの、なんか作って奈留!」


子犬みたいに嬉しそうにまとわりつく彼を、

可愛いと思ってしまう私は、

つくづく駄目な女だ。


「だから、私つかれてるの、

 牛丼おごってあげるから我慢しなさいよ」

「マジっやった!」

駅ビルに入っている24時間の牛丼チェーン


「奈留っここ!

あ、お兄さん、牛丼並と大盛ね。大盛りはつゆだくで卵つけて!トン汁二つ」

とっとと席に座って勝手に注文する。


「ちょっと勝手に注文して!」

「え?違った?」


「まあいいけどさ」

もう何度もこうやって一緒に此処に来ている。

食事の好みは完全に攻略されているのかもしれない。

ふうっ

またため息が出る。

今日は何度目?












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