お見合いの達人
「今日は何?お腹すいたから来たわけじゃないんでしょ?」


「ああ、これこれ、

 兄貴ついに結婚するからさ、招待状」


「え?」


「ほら、彼女もう6ヶ月なんだよね、つわりも終わったし安定してるから

これ以上大きくならないウチに挙げたいんだってさ結婚式」


「そう、よかった……ってなんで私に招待状なのよ?

 破談になったお見合い相手になんてありえないでしょ?」

「?なんか問題あんの?


 別に浮気相手ってわけじゃないし、

 まとまる時の協力者でしょ?


 それに、

俺の彼女じゃん?」


「そうかそうだよっ……て、彼女じゃないでしょ?

 あんたがたかりに来てるだけじゃない」


「たかり?って人聞き悪いな、

 彼女と飯食って悪いの?

 それに俺ら身体の関係だってあるわけだし?


 奈留ってあれ?どうでもいい男と平気で寝ちゃうタイプ?」


「寝ちゃうって、アレはお酒飲んでて、

 そりゃあ寝たけど一緒に寝たってだけで体の関係にはっ!」


私が言った言葉に周りの視線が集中した。

しまったここは牛丼屋だった。


『奈留美声でかすぎ、そんな寝た寝た他人にカミングアウトしたいの?』

くすくす笑いながら、

意地悪そうに口角をあげている藤吾は、完全に私をからかっている。


「もう帰る!」

お財布を開けて千円札を置くと立ち上げった。

「あ、ちょっと奈留っ!」


「なによ!」


「お金足りないよ」


あ~っもう、消費税の馬鹿野郎っ!

財布を開けてちょっと考えて500円玉をばしりと追加した。


これだけありゃあ足りるだろう。

もう千円つけ足さないところがちょっと私らしい。

心の中で突っ込みながら、

一人店を後にした。


順子さん私悪女にはなれそうになれません。



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