お見合いの達人
あの時、

アレは一生の不覚だった。

朝めえ体験はこの世の中の人でいったい何人経験しただろうか。

ないな。



あの時私やってないと思うんだけど、

アイツだってなかったって言ってたけど、何度も思わせ振りな言い方されると絶対なかったんだって否定はできないんだよね。

けど、たとえあったとしてもあれ一回きりだし、

あれから何度もあいつは部屋に来て泊まったけど、

そう言う事は無かったし。



「藤吾かあ」


誰よりも近くて、相性は合っているのかもしれない……

一度寝てみる?

いやいや、ダメダメ何言ってんの私


年下だし、甲斐性なしだし、

とても理想の男とは思えない。


だけど、



藤吾の笑顔で癒されている自分がいるのも確かで……


ぷるぷるっ


いやいやダメでしょう。

あんなのと結婚したら私、一生働き続けなきゃ。

目指せ寿退職のはずじゃないの。


さっき受け取った招待状を手に取る。


「いくわけないじゃん。

 意味分かんない。」


ポイっとDMをまとめている箱に放りこんだ


少し胸が痛むのは、

慎吾とは一瞬だけど結婚してもいいと思ったからだろうか。


誓って恋愛感情なんてなかった。


女心は不可解で複雑だ。


本人ですらわからない。

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