お見合いの達人
「棚田俊郎です。トシちゃんて呼んでね?奈留ちゃん?」

「初対面でちゃんですか?」

「だって君、自己紹介もしてないじゃん?」

「知らない方が、いいんじゃありません?

 私、お断りするつもりですから?」

「ええ?なんで?」

「なんでって、第一印象から最悪なんだもの。

 お見合い場所が河原とか、

 べたべた触る子どもたちとか

 それでもって、足に刺さった木の実とか

 もう耐えられない!」

「でもさ、それって俺が悪いの?」

「そうでしょう?」

「予定が変わっちゃったのは俺のせいじゃないし、

 触ったの俺じゃないし

 木の実踏んだのは君が靴はかなかったからでしょ?」

「それはそうだけど。」

「とりあえずさ、

 足消毒させてよ。

 ね?春日奈留美さん」

何よ、名前知ってんじゃんか、

と思ったけど、

あとから追っかけてきたこの男に、

ちょっと嬉しかったし、

何より足が痛かったから、素直に足を差し出した。

 
< 11 / 198 >

この作品をシェア

pagetop