お見合いの達人
「まあ、ちょっと前から来てたのよ?

 だけど、誰かさんは可愛らしい若い女性に囲まれて鼻の下伸ばしてたじゃない」


「あれは、生徒!」





「俺、塾でバイトしてんだ


「塾バイト!?」


「そ、あ~、尊敬しちゃった?」


「あんたいくつなの?


バイト君なの?フリーター?


変な時間にふらふらしてるし、

おかしいと思ったのよ」


「あ~もうそう来る?


知ってるだろ?俺んち豆腐屋なの。

オヤジがまだ引退したわけじゃないし、

朝仕事が終われば午後からは、俺の仕事はないんだよ。

従業員もいるしね。

塾の方は大学のころからのつながりでね、

これでも実力認められて慰留されてバイト続けてる。

バイトから戻って次の日の大豆の準備なんかもしてるから、

結構勤労度高いんだけど?」


「へえ?そうなんだ」


「ったくようっ……」


彼の豆腐屋があの界隈じゃ有名なんだってことは知ってた。


ほとんどは料亭や居酒屋など、提携したお店に卸されてるから、

一般には予約販売しかされないほどレアだといことも。


店主つまりトシローの父親が頑固な人なので量産はせず、

きっちり手作り豆腐だって。


まあ大将からの情報だけど。


『だからさあ、トシボーはいいぞー、

食いっぱぐれないからなあ』


「つかぬことをお聞きしますけど、

お家の手伝いって、お給料どうなってるの」


ふとあたまをよぎったのは家事手伝いという名前の、

無職の友達。


高校生のようなお小遣い制

月一万、

後は、バイトで食いつなぐ高校生の様な立場。



ごほうびせいだったり、


無償だったりしない?


家族なんだから手伝って当然、なんてことないの?


「一応職人と同じ給料は貰ってるよ。


だけど、半分は家に戻してる、

俺は修行中だし居候の身だからな。


だからあいた時間は塾講師してるわけ」



やっぱり。

つまり修行という名のフリーターじゃないの?


「そ、そうなのね、大変ね」







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