お見合いの達人

「あ~、そう言う顔すんなってあのさ、

職人の給料なんてそんなもんなの。

だけどさ、ちゃんとした仕事してれば、

ちゃんとお客も認めてくれるし、

適価で買ってくれる。

俺が本格的に色々任せてもらったらもっと店大きくするし、


……って、



もしかして、その気になってくれてるってこと?

さっきトシローって名前で呼んでくれたしね」


「え?」



「嫁になりたいって?

マジで?やった!

そう言うの心配しなくていいから。


身一つで俺んとこ来いって、


もし、あんたが結婚してくれたらちゃんと所帯も別に持つし、

給料だってもっと貰えるはずだから」


嬉しそうに手を握られ、


私は思わず身を引いて首をプルプルと横に振りまくった。


「ち、違うからっ」


あわてふためく私を嬉しそうに目を細めてみるトシローに、

きゅんと、してしまう私は、

まるで、思わず本音を洩らしてばれちゃった恋する女みたいじゃない。


違う断じて違うから。



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