お見合いの達人


つくづく、悪女なんて私はなれそうにない。

こういう時はアレよね。

『そうかもね?』

とか、

『どうかしらね?』とかあいまいにして、

キープするのだろうけど、

そんな器量は私にはないようだ。

「そう言うんじゃないから。

 誤解よ!」


力を入れて全否定した。



なのに、名前読んでもらって浮かれてるトシローは、

舞い上がって、何言っても聞く耳はない。


「結婚式は地味でも絶対挙げようね」とか、

「できれば部屋は職場の近くがいい」とか、

一人でペラペラと結婚について語り始める。


私は、あきれて、言葉もない。


だけど、そうか、

私こういう展開期待してんたんじゃない。


最初お見合いをした時、

結婚さえできれば細かいことには目をつぶろうって思ってた。


結婚はゴールだと思ってた。


そしたら肩にかかった色々な物を下ろせて清々するって、

だけど、その先が気になり始めた。





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