お見合いの達人
そう言えばトシローって何歳だっけ?
「あ、あの話は変わるけど、
トシローって何歳?」
「馬鹿っいいとこで変えるなよって、38歳だけど?」
「さんじゅーっって年下じゃない!」
「この際38も40も変わんないだろ、適齢期には違いないしさ。」
「俺は知ってたけど?春日奈留美、この間40歳になったばっかり。
両親は群馬在兄一人と弟一人。
大手文具メーカーハナヨ勤務。
松加市ワオンモールの『ステイショナイリー・フラワーピック』に出向中だったが、
間もなく本社販売促進部に配属予定、だろ?」
「は?何で?」
「だって最初に貰ったけどほらあれ釣書ってやつ」
「そんなの私書いて……あっ」
酔っ払った時ペラペラと喋って、順子さんに書いてもらったんだ。
あの時相当酔ってたから、
とても書ける状態じゃなかったし……しかしまあ馬鹿正直に……馬鹿じゃん私。
「歳なんて気にすんなって。
奈留美が何歳だって関係ないし。
それに仕事続けてもいいし、やめてもいい。
奈留美の好きにしていいから、
だからだからさ、
おねがい結婚してよ。
俺本気なんだ。
奈留美だけしか考えらんない。
一目ぼれなんだ」
なんて、間抜けたプロポーズ……
ああ、神様、私、陥落してもいいでしょうか。
この人ピュアです。激ピュアです。
やきゅうばかだけど、フリーターもどきだけど、
私のこと本当に好きなんだって体中で言ってるんです。
これ逃したら勿体ないお化け出ちゃうよきっと。
「か、考えてみてあげてもいいわよ」
あくまで悪女きどりつつ,
でも陥落寸前の私は隠しきれません。
現金と言われてもしょうがないけど、
さっきまで、色を失くしてた結婚の二文字が私の中で輝き始めた。