お見合いの達人
「……だからですね、

　まあ、今考えたら、

　初め彼に対してこういう状態になれたらって思って、

　お見合いした訳ですよね。

　それをお見合いの場所がどうとか、

　彼の生活の中心がなんだとか、

　そんなこと、逃げるためのいいわけだったなあって……」


「だからどうするの？」


「え～と、……どうしましょう？」

「結婚は逃げ道にしちゃダメよ。

そこがゴールじゃないんだから」


「え？」


「後悔なんてしなくて済めばその方がいいんだから」


「あの、順子さんは後悔してるんですか？」


「どうだろ？あの人のことは好きだし、愛情だってあるの。

毎日結構楽しいよ。


結婚を決めた時、この人と面白おかしく暮らせたら幸せだなって結婚したんだから。

　けどね、

なんて言ったって３人目だし、

最初の人はなくなってていい思い出しかないし、

２人目の方には子どももいるわけで、

やっぱ子どもできないと肩をならべられないっていうか……


２０年私が一番長く連れ添ってるのに、私が一番あの人から遠い気がして、

……まあ、いつもそんなこと考えてるわけじゃないけどね」


ツーカーで楽しく夫婦生活を送っているように見える二人にも、

そうではない一面があったなんて、

結婚がゴールじゃないって、ホントそうなんだね。


「結婚写真すらないのよ私たち」


順子さんの心の切なさがその一言に込められてた。















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