お見合いの達人
「最後?」


「うん。

 兄貴の結婚式に俺の彼女として出て。

 話し合せてくれるだけでいいから」


「どういうこと?」


「聞いてくれるのくれないの?」


「だから無理だって……」


「奈留!」


「藤吾……そんなに……どうして」




悪女になるとか意気込んだって、結局私は変わることなんてできなかった。


「わかったわよ」


必死の形相な藤吾にそれ以上NOを言うことができなくて、

いつもの気まぐれなわがままに振り回されるのは不服ではあるけれど、

行くだけならと、

頷いてしまった。




行くと言ってからの彼は嬉しそうで、

そんな彼を見て嬉しくなってしまっていた。


「しょうがないなあ」



その後の藤吾はいつものように飲んだり食べたりして、

明け方帰って言った。


最後の願いだという言葉をどんな気持ちで言ったのかなんて、

考えることすらしなかった。



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