お見合いの達人
私は無言で付箋にいくつかの不明なファイルを書き出し、
「そう急にこの資料をそろえてください。すぐにです!」
「課長は、う、分かった!
誰かっ!」
皆視線をそらしてさっきまでしていなかった仕事をで忙しそうに始め無視する。
「 高野くん!高野くんこれわかる?探してすぐ」
「はあ。すみません。こっちの報告書終わってからでいいですか」
「ああ頼む」
課長はたった今営業から帰ってきた、新人の高野君仕事を振っていた。
他の人たちもいるだろうに……
受付に座って長い爪でめんどくさそうにキーボードをゆっくり押していた浜木さんの姿を思い出す。
あの人がするはずだった仕事なのだろうか?
課長は昔から人が良くて、有名な人だ。
もうすぐ定年だと言うのに課長になったのも最近だ。
仕事を振り分け形にしていくことができない課長の下で働くのは正直しんどい。
とにかくこれを片づけてしまおう。
今日中に帰れるだろうか?
本社にいたころ当たり前だった
朝はきっちり定時から始まり、
残業があったとしても、人並みの時間に街を歩けると思っていた私はその考えの甘さにがっかりした。