お見合いの達人
「そっかあ、こんな感じなんだ?

 奈留の部屋って!」

「ちょっとあまり見ないで!」


「あはは、ごめんごめんっちょっとまいあがってて」

もう本当に犬なのかしらこの人……

10年前に付き合ってた元カレのマサハルが飼ってた室内犬のティンクも、来るといつも感じだったっけ。

ティンクどうしてるかな……そういえばアイツより犬が可愛くて別れがたかったんだよね。

私ってホント男運がないから。


あの頃は若かったなあ

っふ


十年って言ったら一昔前だ、ティンクも生きてるかどうかか……

昔々か……やばいな、私、年寄りくさーい。

………

「奈留ーっどうした?こぼれてるぞ」

急にトシローに声かけられて、はっと我に帰って、

ドボドボお湯を注ぎ続けたティーポットからは、

トレーにまであふれてて、

動揺した私はそれをひっくり返した、


ガシャンッ


「奈留っ危ない!!」

「きゃあ」

避けることができなかったお湯は、

私を守るように覆い被さってきたトシローにかかった。


「ちょっと、トシローやだ、火傷しちゃうっ離して!」

「ああ、いや結構ひりひりしてるからたぶんもうしてるし、

どうせならこのままいてもいいかな」

後ろ抱きにされてるまま、叫ぶ。


「馬鹿こんな時に何言ってんのよ。重いしっ!

 すぐ水っ!そうよシャワー浴びてっ水のっ!」

「ちぇ」


トシローは観念したように私の上から退いてのろのろ立ち上がると、

お風呂場に動いてくれた。


「早くっ」

一刻も早く冷やさなきゃ、火傷ってそういうもんでしょ?















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