お見合いの達人
その気もないくせに、アラフォー女子をキュンキュンさせてどうしようってのよ。

じっと差し伸べられた手を睨んでしまう。


『ばかだなあ』

それはまるで愛しいものを見るような目で、私を見つめる。


『お見合いとか兄貴とか関係ないから、

俺はちゃんと違う次元であんたが好きなんだ。奈留』

ふわりと両手で私の右手を包むと、

今まで私に向けたことなかった何とも例え様のない優しい笑顔で、

『好きだよ奈留。世界中のだれよりあんたが』

愛の言葉を紡ぎ出した。



カランカランカラン……



特設された結婚式施設で一組の夫婦の成立を告げていた。


「行かなくていいの?」


 『やべ、満里奈にねちねち怒られるな

 行こう奈留っ、今日の主役たちに一撃加えてやろう!』



一撃って何?





自由を失った右手は藤吾にしっかりと取られ、

私の頬は自然に緩んでしまう。


私たちは幸せに将来を誓い合った二人を祝う声と歓声で湧き上がっている場所に向かって走り出した。




















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