お見合いの達人
その日は快晴だった.

晴れやかな笑顔でオープンカーに乗りガラガラと空き缶を鳴らしながら、

新婚旅行に行くために、牧場を走り去って行った新郎新婦は、

大昔の外国映画みたいだった。


『うけるな、いつの時代だよ』


そう言って藤吾は大爆笑していた。

「そう言ってくれるな、

 私と妻が結婚して時にしたことをどうしてもやらせたかったんだよ」

その声に振り向くと、

恰幅のいい白髪交じりの紳士が立っていた。


 『社長!』


社長?って言うと花嫁の父?


「君が春日さん?」

「あ、はい。この度はおめでとうございます」


「春日さんには謝りたいと思っていたんだが、なかなか機会がなくて。今になってしまって申し訳なかった。

とにかく娘が頑固者で、プロポーズもしない男とは結婚しないといってね、

だけど、婿も煮えきらない男だし、

腹の子はどんどんん育つし、親としては一芝居打つしかなくてね。

同窓会で朝子さんにお会いしてね、

君にあの役をしていただいたんですよ」


「そうだったんですね」

「本当に自分の子可愛さにお恥ずかしい」

「いえ」


あんまりにも恐縮するので、文句言う気にもなれず、只ただ、相槌を打ち苦笑いする。










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