お見合いの達人
「藤吾も知らなかったって言ってたけどほんと?」


『ほんとだよ。知ってたらもっとうまく立ち回るし、

 二人の邪魔もする必要なかったじゃん』


「そうか言われて見ればそうか……」


『まあ、おかげであんたと知り合えてこうなった訳だし、

ある意味社長と伯母さんには感謝だね』


こうなったって?

正直戸惑っている。

私にとって藤吾ってなんだろ?

藤吾にとって私って?


お互いに好意があるのは確かだけれど、あえて曖昧な関係のままなのだ。

出会いが結婚を目的としたものだったから尚更。

まあ、兄のお見合いに無理やり割り込んでかき回すという、変わり種だったけど。


今だって、友人にも恋人にも該当しない微妙な立ち位置。


「藤吾私ね……」

「俺、沖縄の友達のとこ行くことになった」

「え?」

「だから、もうつきまとうのやめるから」

「え?」

「知ってた。困らせてるの。

 奈留の優しさと優柔不断なことにつけ込んでた」


「ど、どういうこと?」














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