お見合いの達人
呆気ない藤吾との解れのあと、

その余韻に浸りながら、電車に揺られた。


これでよかったんだと思う。


手放しで好きと言えない打算まみれの私に、

藤吾の真っ直ぐな思いは大きすぎてきっと抱え切れない。

それに、前に進む決心をした藤吾の足かせになっては行けない。



藤吾の別れの言葉がまだ耳に残っている。

『バイバイ』




彼の願いを叶えるためにやって来た。

この別れがかれののぞみだったのだと思うと切なさで胸が潰れそうだった。


今までのらりくらりと本気で向き合わなかった私は悔やむことさえ赦されないのだ。



これは罰だ。

最後に藤吾が下した私への罰なのだ。
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