お見合いの達人
「あれ?君何処かであったことあるよね?」


私の回顧の念を撃ち破ってナンパの常套句を言ってくる怪しいやつ。

ウザイっ

振り返り様に睨み付けると、

ぎょっとした顔で躊躇しながら、

「そ、そうだよね、ほら婚活イベントで会ったじゃない。

ビンゴちゃんでしょ?」

ビンゴちゃんって?

ぼやけて顔が良く見えない。

さっき駅のトイレ涙腺が緩んでズレやすくなってしまったコンタクトを廃棄してしまった事を後悔した。

ONE DAYに変えてから、いつも予備を持ち歩いていたのに、

ここのところ色々あって、切らしていたことを今朝気がついた。

なのに、うっかりいつものように棄ててしまったのだ。


細めた目でじっとその人を見上げると、

彼は困ったように苦笑した。


「そんな、疑るような目で睨まないで欲しいな。

ほら思い出せない?あの、お見合いイベントで、ね?ほらっ

こんなとこで会って、浮かれて声かけちゃっただけだよ。


別にとって食おうって言うんじゃないからさ。

あの時だって別に騙そうと思ってたわけじゃないんだよ」


あの時、ビンゴ、

ああ、モールのおみパだ。

それほど昔のことじゃないのにすっかり記憶の隅に片付けていた。


「あの時ビンゴで一緒に踊ってくれた人」


「そうそう、そっかよかったあ、思い出してくれた?」













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