お見合いの達人
「女の敵ね」

「そうかなあ、実際それで揉めたことってないんだよ?

 俺に誘われたことで、自信になって幸せつかんだ人もいるしね?」

でも、実際アラシって言われてるわけだし、

問題あるんじゃないの?

「付き合った人たちはどうなってるの?」

「まあ、そこそこ仲良くなって、適当な時期にお別れする感じだね。

 もちろん、そう仕向けてね。

これ俺のバイブル」


そう言って差し出したビニール製のジップファイルに入っている本。

『女性の心理学』


「この本ホントすごいんだよ。

 好かれるスキル、嫌われるスキルどっても網羅してるんだよ」


ファイルに収めてあるところを見ると本当に大切にしているのだろう。

しかし著者はそんな悪事に使われようとして書いたわけではないだろうにお気の毒だ。


「でもいいの?そんなこと私に話しちゃって」


「ああ、そうだね。でも、君とはどうしてか同志みたいな感じがしてさ」


「は?何で私?」

「あの時はホントに君とは、もう少し話したいなって気持ちで誘ったんだよね」

「え?だってあの時は……」

「そうそう、邪魔が入ったんだよね。

俺としても揉めるの面倒だったから、あっさり引き下がったんだけどさ。

あれ、初めてだったんだ、持ち帰りなしのイベントって。

そう言えばあの彼とまだ仲良くやってる?」

「え、いや……はは」

苦笑するしかないよね。できれば消し去りたい黒歴史になってるのに。







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