お見合いの達人
「なるっ!」

イライラと通路を歩く私を追いかけてくる声に、振り返った。

「え?」

怒ったような、呆れたようななんといえない顔

「何やってんのあんた。っつうか、何やってんだ?俺」

「トシロー?なんでここにいるの?

 え?ちょっと何?」


トシローは、私の顔見ないで、

腕をつかむと黙ってずんずん歩きだした。


「トシローッねえっ何?


ねえってばっ」



パーキングの連絡口まで来たところでやっと手を離すと、

大きくため息をついた。


「はあっ--------っとに、どうかしてるよ俺」


「トシロー?」




「お前のせいだからな?帰りに電話しろって言っただろ?

 迎えに行くって言ったよな俺」


「あ、うん。そうだった」

「ずっと待ってるとかどんだけなんだよ、忠犬ハチ公かよ。

監督に文句言われて、塾まで休んで、

ずっと駅でスタンバってた。

お前さあ、首になったら責任とれんのか?」


「そっか、ごめん…

 ってか、頼んでないよね私?」

「あ~っそうなんだよね。

 頼まれてない。

 なのに待つし、

後つけちゃうわ、

もう、ストーカーだよ俺……」



さっきよりさらに大きなため息をついた。


「なる、いいかげん俺のものになってよ












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