お見合いの達人
「トシロー」
ずうっと待ち望んでいた。

誰かに必要とされること。

なのに急に増え始めた選択肢に踊らされている。

誰でも良かったんじゃない。

なのに、どうしてその手をとることができないんだろう。

「ごめんッ、今のなし忘れてっ」

「トシロー私は…」


「ああ、ゴメンしくった、わかってるんだ、奈留ほんとの気持ち。

わかっててこうやってちょっかいだしてる。

待てるよ俺、だから、俺がいるって忘れるな奈留」

「トシローはどうして私なの?

婚活始めて、なんだか急に回りが変わり始めて、

調子づいたり落ち込んだり、

正直自分でも自分が嫌になる。

私にそんな風にトシローに言って貰える価値ないと思うよ」



「価値なんて、それぞれ違うだろ?

俺には奈留がいいんだよ。

奈留じゃなきゃダメなの。

そう思い込んでるんだからしょうがないだろ?」


「なら、待っててくれるの?いつになるか分からないわよ?」

私はズルい。

こんなことこの人に言わせといて答えてあげられなかったら?


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