お見合いの達人
「いつまでも待つよ」
「待たせておいてNO ってことだってあるかもしれないのに?」
「そうだな、そう言うときはなるべく早めに振ってくれ」
「馬鹿よ」
「馬鹿だよな」
心の底から沸き上がる愛しいと言う想いは、愛なのか情なのか、
トシローの頬に手を伸ばして触れた。
触れたところから暖かさと優しさが流れ込んで、
固くなっている私の感情がホロホロと崩れ出した。
「トシロー……ごめんね……」
トシローは自分の頬に触れている私の手をそっと指でなぞり、
泣きそうな顔で笑った。
「やべ、もう後悔してる……」
「馬鹿……」
この人の心に寄り添いたいと思う。
だからこそ、一度私の心のなかを精算しなくてはならない。
そうじゃないときっと何かの折に触れて彼のことを思い出してしまう。
例えそれが後悔とかじゃなかったとしても、
トシローのまっすぐな思いに向かい合えなかった自分を許せなくなるに違いない。