お見合いの達人
修行サークルに入ったのは、

別に大した動機では無かった。

敷いて言うなら、大学くらい好きに過ごしたかった。

実家の方からあれこれ言われるからいなら、

ポーズでもなんでもまじめにやってるって言う事のアピールにすぎなくて。


実際修行サークルと言いつつ、

山で楽しくキャンプをしたり、

川で滝行の真似をしたりと

それっぽく楽しみつつアウトドアを楽しむサークルだった。

そんな生活の中私に変化を与える事が起きた。


2年の夏、大学が所有する山の寺で合宿した時のことだった。

その夏の異常な暑さは、

涼しい筈の山の上でも、容赦なかった。

座禅会は古いながらもきっちり掃除されぴかぴかに磨かれている。

ここに着いてから、

嫌って言うほど雑巾がけをやらされたからだ。



無心で仏に祈りをささげる。

その行為は思ったより私の身体に馴染んでいた。


空気が止まっている状態で戸を開け放された本堂は、

やけに気持ちが引き締まる。

座禅というものはこんなにも心地よいものなのだと身体の底から喜びが湧きあがってくる。

しかしそれはすぐ苦しさに変わってくる。

慣れない床の固さと自分の体重の重さが、

じわじわと自分の身体が何かに侵されて行く感覚。

いわゆるしびれてきたのだ。






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