お見合いの達人
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「じゃあ、またこちらからご連絡します。
今日はありがとうございました。」
「こちらこそ」
その日夕方まで、彼と過ごした。
一緒のご飯を食べて、
植物園に行って、
小さなカフェに行って、
駅まで送ってもらう。
まあ、普通のデートコースをたどった。
終始彼は紳士的で、表情も穏やかだった。
先程の話は冗談だったのかと思えば、
悪くない相手だけれど、
「あの……」
「はい?」
「初めに言ってた話は冗談ですか?」
「まさか、冗談じゃないですよ?」
「じゃ、じゃあ、私がもしそれでいいって言ったら、
結婚するってことですか?」
「はい。あなたさえよければ。」
「……少し考えさせてください。」
「よいお返事を待ってます?」
私だって、お見合いで相手をみつけるって時点で、
恋愛を期待しているわけじゃない。
穏やかな彼と静かに暮らせるなら、
彼が私と結婚することで、
困難から脱することができるのなら、
いいんじゃないかと思えてくる。
でも、
彼の守りたいものって、牧場だけなの?
それとも、
その付き合っていた製薬会社の社長の娘?
もし結婚したら、
人生を掛けて守りたいものに私は加えてもらえるのかな?