お見合いの達人
「春日」

部長が私をみつけて手招きをした。

出たタヌキおやじ。

電話で済ませりゃいいものを、

こんなとこに呼びつけるから、

嫌な思いしちゃったじゃないのさ。

作り笑顔をしながら、


「ご無沙汰してます部長」

部長の席に歩み寄る。

さすがサービス業、自分でもあっぱれ投げるわ。


「浜木さんコーヒー二つね」

そういうと小会議室を指差した。


「はい」

面白くなさそうに返事をすると、

彼女は席を立った。


そうだった。彼女は入った時からずっとあのポジション。

受付をしてお茶お入れる。

ただそれだけをもう十何年もしている。

私がここにいたころ、

彼女のことをやっぱり使えないって見下してたとこあったな。

まあ、今も大して変わらないけど(笑)

でも、今は彼女は私のことを見下している。

たぶん。


本社から飛ばされた私より自分の方が、

優位にいるんだと思っているのだろう。

そんな女にお茶を出すなど、気分悪いんだろうな。


私は横目で、給湯室に行く彼女を見送りながら、

部長について会議室に入る。






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