お見合いの達人
部長の話は、私の予想の遥、上をいくものだった、

『人の流れと言うのは、何かをきっかけに変わるものだ』


そんな風にいう人はいたけれど、

まさにそういうことなのだろうか?


「春日君を

 そろそろこっちに戻してはどうだろうと言う話が出ていてね。」


「は?こっちと言いますと?」


「本社の方にだよ、

 実際あの事は大した損害にならなくてね、

 君の移動は、やりすぎじゃないかっていう人もいたんだよ。

 君のいるモールの店舗も、

 狭い割に売り上げがいいってことで、

 売り場の拡張を計画しているんだよ。

 ちょうど契約も切れるので、モールからも打診があってね。」


「うちの店舗を拡張ですか?」

「そうそう二階の端、

今書店がいるところ。」


「ああ、樹の小屋書店ですね」

「なんでも、近くに郊外型の大型店舗を建てるらしくて、

 今期の更新手続きをしないらしいんだ」

「あの場所ならちょうど北の駐車場から入る入口に近いから、

 来店者も多くなるかもしれないです」


「そうか、やはりな。

 早急に会議にかけて、店舗を押さえよう。

 次期の更新手続きに間に合わせないとな」




「これも君の働きあってこそだよ春日君」

何この上機嫌。

なんか悪いものでも食べたのこのタヌキおやじ?

大体、あれこれ難癖つけて私を飛ばすのに加担した1人のくせに。

苦々しい思いでひきつった笑いしか作れないのは、

はまだまだ修行が足りないのかしら。






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