お見合いの達人
今頃になって仕事のことで悩むようになるとは思わなかった。
もう、未練なんてないはずだった。
「お先に失礼します」
「あ、高津さん今日はありがとうございます
仕事も急に頼んじゃってごめんなさい」
「いいんです。
本社からの呼び出しは店長のせいじゃないですし、
ミーコちゃんもいたし、
こっちは比較的落ち着いてましたから、
でも、あの店長、来週のシフト割明日いただけますか?
私旅行の計画があるんです。だから……」
「あ、きゃあヤダ、ごめんなさい。
本当なら今日渡すものだったのに!
明日必ず!」
「はい、よろしくお願いします」
高津さんが帰って行くのを見送りつつ、
あわててPCを開いた。
雑然としているバックヤードの小さな隙間で
変更箇所を直してプリントアウト。
ピー--っとプリンターの電子音を聞きながら、
ふうっ
とため息をつく。