お見合いの達人
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ちょっと待て、

それは無いだろう?

指定された場所は、

町はずれの河原の小さなグランド。

「ああ、こっちこっち!」

大将が満面の笑顔で、

おいでおいでをする。

そこには一枚のピクニックシートが、

いや、ホームセンターで売ってる青いシートが、

敷かれ、

おせち料理に使うあれ、

重箱が並べられていた。


「ちょっと張り切っちゃった。」

そう言って笑う順子さんは相変わらずプリティ。

「座って座って!」

そう言って自分のとなりにクッションを置いて勧めた。

「これは?」

「ごめんなさいね?

 あの人妙に張り切っちゃって、

 朝から4時起きでお弁当なんて作りだして、

 まるでピクニック気分なの。

 こんなんじゃムードもないわよね」


「あ、いえ」

早起きして張り切る大将の映像が目に浮かんで、

大将に普通を求めているあたしの方が、

無理だった。

ため息をつきそうになる喉もとにぐっと力を入れて押しとどめ、

ミュールを脱いでブルーシートに乗る。


ミニのレースをあしらったワンピースを着た今日のあたし。

一歩ごとにガサガサとした足音がするたびに、

自分の場違いな格好が思い出され、

回れ右して帰りたくなった。

















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