お見合いの達人

木原……

表示を見て、
兄だ兄の方だ。

木原慎吾
昨日一緒にいた男の兄？

メールアド教えたっけ？

ーーー

『突然のメール失礼します。

お話したいことがあります。

お時間いただけるでしょうか。』


これだけ？

きっと、あいつのことだろう。


きっとこの人はなぜあいつが家出をしたのか、

判っていないんだろう。

自己犠牲で、酔っている兄に一言言ってやりたい。

さっそく返信のメールを送らないと。


ええと、

『都合のいい日は……』


あ、私もなんか筋違いなことをしようとしてるのかも。

一応あいつにも連絡しとくか。

昨日交換したアドレスにメールを張り付けて、

会うつもりの趣旨を書いて送信した。


今頃、もう私の家にはいないだろうあいつは、

どこでこのメールを受け取ったのだろう？


あいつの顔を思い浮かべて、

かぶりを振る。

お見合いなんて、

一度会って断ったら、

もう二度と会わなくてもいいはずなのに、

もう関わりたくないって思っているのに、

どうしてこう放っておけないんだろう。