お見合いの達人
アパートに戻ると、

置き手紙さえ残さず、

あいつは消えていた。


鍵はポストにいれるように言ったのに、

持ち去られていた。


「あいつ、また来る気なの?

図々しいったら」


そういいながらも、

ほっとしてる自分がどこかにいて、

私ったら何に期待してるんだろう?

送ったメールに返事は無くて、

一晩ちらちらと画面をのぞいたけれど、

どうやらこの件に対して返信するつもりはないみたい。

ふてくされたようなあいつの顔を想像して、

ふっと笑顔になる。

バカな!私はあいつが好きになってしまったとか?

ナイナイ、それはない。

しいて言うなら愛着、それに違いない。


「さて、明日も頑張って行こ!」

顔に張り付けたパックをぺリっと剥がしてダストに捨てると、

ごろんとベットに転がった。
         








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