お見合いの達人
「……」

図星なのか呆れたのか、

私の方をじっと見たまま動かない木原さんに、

私は言葉をつなげた。


「彼は、

あなたに自由になって欲しかったんだと思います。


あの牧場を維持していくのは大変なんでしょう?

ただ、戻ってきた弟のためにどうしても存続させたかった。違いますか?


あなたの元カノって、社長の娘さんなんでしょ?

幼馴染なんですってね、

 あなた方お二人の。

わざとケンカして飛び出したんですよ。

彼はあなたたち二人に幸せになってほしいんですよ。

牧場を会社に買い取ってもらって、

社長の娘さんと結婚したらあなたは楽になるんでしょう。」


「そんなことまであなたに話したんですか?」

「あ、ごめんなさい。

半分くらいは憶測ですけど、

結構合ってました?」


「ほとんど合ってます。」



「あなたも、その彼女さんのお父さんも、

 なんだか意地になっちゃって身動きとれなくなっちゃってませんか?

 だって可笑しいでしょ?

 もう別れた相手にに対して期限までに結婚したら援助するなんて条件

 娘さんに貴方をあきらめさせるため、なんて理由で、

 他人の人生を操作しようなんて、有ってはならないことだもの。

 頭を下げて見たらいいです。

  『娘さんをください』って

  彼女も、社長さんもあなたがそう言ってくるのを待ってるはずですよ」
 



< 65 / 198 >

この作品をシェア

pagetop