お見合いの達人
ネームプレートは

渡されたプレートに自分でニックネームを書きこむ。


いわゆる呼んでもらいたい名前。

私は『るな』と表記した。

字を逆さにするだけでかわいらしくなる私の名前。

親もつける前に間違えてひっくり返してくれればよかったのにと、

子どもの頃はよく思ったものだ。


しかしアラフォーともなれば名前のかわいらしさより、

じぶんの名前の方が愛着が増すというもの。

まあ、見ず知らずの人に名前を披露するのも何なので、

今回は『るな』で行かせてもらう。

ちょっとキャバクラの娘見たいでむずむずするけど……

タグをつけて、

入場すると、10番シネマんにお入りくださいと案内された。


中に入るとイスが移動されていて、

ちゃんとパーティ会場が出来上がっていた。


「へえ、すごい」

「あ、春日さん!」

「え?あ、蓮沼さん」

「覚えてくれてたんですか、お話したことなかったのに」

確かにそう。

顔はよく見るが、話したことは無い。

でも覚えてますとも

3階の山原音楽スクールの責任者の人

にこにこと笑う好青年だなって思ってましたよ。

「桜井さんに教えてもらって参加したんです」

「僕はその桜井さんの友達の林さんに、

 押し切られての参加です。

 彼女の企画なんでね」

なんだ、林さん狙いか、

ちょっとがっくし。


「いやあ、ホントこういうところ参加するって初めてだから緊張してたけど、

 知ってる方がいらしてよかったです。よろしく!ええと、るなさん?」


「ほんとは、なるみなんですが、ちょっとひっくり返して。

 あはは」


「そうかそう言うものなんですね。

 僕はそのままフルネーム書いちゃいました。」


『蓮沼 永輝(36)』


永輝……永遠に輝くとかなんてハイセンスなん名前だ。


御両親がさぞや御立派なんだろうな。


三つ下か。


歳まで書くとは律儀な!


私なんて空欄よ。


ひけらかす年齢じゃないし。








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