お見合いの達人
「そんな心配しないで。

 きっと、いや、絶対君は好きになると思うから。

 ぼくが見染めた人だから」

くすくすと笑いながら、カードキーの様なものを差し込むとピーと電子音がして

真っ黒なドアが開く。

じっとりと背中が嫌な汗をかく。

何?なんなの?

私は引かれるがままに中に入ると、

厚い遮光カーテンに囲まれた場所は、薄暗く目が慣れるまで、

足元灯を頼りにおずおずと進んだ。

もう回れ右して帰りたいよう~(涙)

呼び鈴の様なものを彼が鳴らすと、

電光掲示板にREDの文字。

「ラッキ-だよ。赤の部屋は一番人気だから中々とれないのに。

 やっぱり君は持ってるね」

私の気持ちと相反するように、どんどん高揚していく様子の彼の様子に、

更に不安が募っていく。

「さあ、素敵な時間が始まるよ」


「え、ちょ、ちょっと蓮沼さん!」


引きずられるように彼に引かれて薄暗い廊下を歩かされていく、

拒否したい気持ちと、この後どうなっていくのかという好奇心にさいなまれながら。



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