お見合いの達人
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そんなことを知ってか知らずか、

お店に日参する男が二人。


言わずと知れたトシ坊と藤吾。


藤吾はあれから部屋には入れていないが、

仕事が休みの日にはアポなしで現われ、

私の意思に関係なく連れまわす。

「店長また来てますよ。
そして、ご指名なんですけど」

「ん、わかってる無視していいから」

「でも、一応お客様だし……」

「あー、もうわかった、今いく」

パソコンの受注管理画面を閉じてため息をついた。

この時間、どうせまたトシ坊でしょ。

配達が終わって、帰りに回るのを日課にしているようで、

用もないのに店に立ち寄ってあーだこーだ言って一時間くらい粘って、

小さなものを購入していく。


「ま、一応お客だけども……」





予想通りの男が、店舗の隅に置いてあるフリーペーパーをバラバラとめくりながら、

何やら百面相。

そんな彼を遠目に眺めながら、

「ふふっ」

相変わらず健康そうな人懐っこい顔と表情に、つい笑いが漏れてしまう。



「あー、や、やあ。」

ばさりとペーパーを置いて、

まるでいたずらが見つかったみたいな顔で、あわて顔。



「本日は何をお探しですか?」

「今日こそちゃんと返事を聞きに来たんだ」

「プライベートなお話は困ります」

あくまで客として対応する私の態度を

鼻で笑うと。

「この店あんたごと全部買うって言えばいいのかよ」

あり得ない馬鹿なことをほざく。


「馬鹿なの?」





















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