佐藤さんは甘くないっ!
オフィスに辿り着く前から、なんとなく嫌な予感がしていた。
部署に入ったり出たりと慌ただしい動きをしているひとが目に入ったからだ。
そしてその悪寒は、事実となって突き付けられることになる。
「佐藤さん、おはようございます」
「おはよう柴。さっそくだが今日は仕事が山積みだ」
「(今日も、ですけどね!)」
「また部長が忘れていた所為で期限が明日までだ」
「しょ、承知しました」
どうしてこういう勘だけやたらと当たるんだろう。
あと……早く佐藤さんが部長にならないかな、ほんとに!!
部長が大事な仕事の期日を忘れていてその尻拭いをさせられるのは毎度のことである。
そのくせ大して謝らない部長に心の底から殺意が沸く。
しかし明日までってまたハードな…。
そうこうしている間に目を疑うほどの書類がどっさりとわたしの机に積まれた。
こ、これは…残業確定では…!!
月曜日から残業なんて本当についてない。
だけど佐藤さんは既に高速でキーボードをカタカタしていた。
「……お昼になったら声掛けますね」
佐藤さんは一度集中するとご飯も忘れて仕事を続けてしまう仕事バカ人間だ。
なのでわたしが声を掛けてお昼ご飯の存在を思い出させてあげなくてはいけない。
…わたしが入社する前はお昼ご飯どうしてたんだろう…。
そんなことを頭の隅で考えながら、痛む頭を押さえてパソコンと向き合った。