佐藤さんは甘くないっ!
宇佐野さんと初ランチ。
食事が運ばれてきた途端、突然爆弾も一緒に降ってきた。
「柴ちゃんって馨と付き合ってるんだよね?」
「ぶふっ」
口に含んだ水を思いっきり吹き出すところだった。
女子らしからぬ声を出してしまったわたしはとりあえずおしぼりで口を拭って聞かなかったことにしようと試みるも、宇佐野さんはにこにこ笑顔を崩さない。
やっぱり三神くんに似ている気がする。
ていうか三神くんのボスって感じ。
逃げられないことをもっと早い段階で悟るべきだったと思う。
嘘を吐いても絶対にばれてしまうので、わたしはおとなしく観念した。
「……どうして、そう思ったんですか」
もしかして佐藤さんから聞いているのだろうか。
確かに親友だったら話していてもおかしくないけど、佐藤さんは何も言っていなかった。
それに今“~だよね?”と確認されたのだからやっぱり本当の事は知らないはず……。
「だって最近の馨、仕事中ずっとうきうきしてるもん」
堪えきれなくなったように爆笑している宇佐野さんをわたしはぽかんと眺めた。
……聞き間違いかもしれない。
宇佐野さん、うきうきって言ったよね?
「あの佐藤さんが!?うきうき!?!?」
あまりの衝撃で、考えるより先に言葉が飛び出してしまった。
相当変な顔をしていたのか、宇佐野さんの笑いが加速して過呼吸みたいになっている。
一応これでも女子の端くれなので顔を見て笑われるのは悲しい。
笑いすぎてお腹痛いよ、と宇佐野さんが目尻に涙を溜めて楽しそうにしていた。
わたしはちっとも楽しくないですよ、と膨れてみせる。
「笑ってごめんね、柴ちゃんがあんまりにも驚くからつい」
「だってあの仕事中は“真顔不機嫌仏頂面”しかないような佐藤さんですよ!?」
仕事中の佐藤さんにうきうきなんて言葉、似合わなさすぎて寧ろ怖い。
がみがみぐちぐちなら見慣れているけど、うきうきるんるんなんてだいぶ遠慮したい。
黒猫に横切られるよりずっと不吉な感じがする。絶対見たくない。