佐藤さんは甘くないっ!

積み上げられた書類は一向に減らない。

部署全体で部長の尻拭いの仕事をしているため、普段よりオフィスがピリピリしていた。

なんとも空気が悪い…まだ月曜日だというのに皆の顔に疲れが滲んでいる。

しかし佐藤さんはそんなことどうでもいいと言わんばかりに、やはり高速でタイピングを続けていた。


うちの部署は5階にあり、8階以上は上層部しか入れない区域になっている。

といっても主に会議や接待で使う階であり、わたしたちには関係のない場所でもある。

あと社長室なんて、お願いされても入りたくはない。


5階は事務的な仕事が多く、会議の資料作成であったり企画書の打ち出しに追われている。

しかし企画に携わることができるのは佐藤さんのような優秀なひとだけで、わたしのような新米がその仕事に関われていることがもはや奇跡的で有難いことなのだ。

……多忙すぎて、その有難さを度々見失うけど。


部長に昇進するらしいということも、佐藤さんはわたしに話してはくれなかった。

わたしなんかを秘書のように使ってくれるということは仕事の面で多少認めてくれているのかな、なんて一時は舞い上がっていたけど。

あの鬼畜シュガーめ…!

わたしが扱いやすいだけなんだ。

良いパシリになるから使ってくれているんだ。


あー悔しい!

思わずキーを叩く力が強まり、エンターキーが悲鳴を上げた。

横目で見ると佐藤さんの書類はあんなに山積みされていたというのにもう残り僅かになっていた。

し、信じられない…。

一瞬茫然として、すぐに現実に引き戻された。

絶対に…絶対にっ……いつか追いついてやるんだから!!

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