佐藤さんは甘くないっ!
事の発端は―――佐藤さんに現を抜かしていた所為ですっかり忘れていた、歓迎会だ。
誰のための歓迎会かというと、三神くんを初めとした研修中の彼らのためのものである。
開発部署全体では3人の研修生がいて、第一、第二、第三部署にひとりずつ配属されている。
この歓迎会は毎年行っているもので、開発部署合同で行われる数少ない恒例行事となっている。
同じ開発といえども、わたしのような新米は正直人脈が広くない。
飲み会の席で話すのも結局同じ第一部署のひとになってしまうのが現状だ。
しかし、部長や宇佐野さんは他の部署のトップたちと毎年話し込んでいるのが印象的である。
今年もその時期がやってきていて、気付けばそれは今夜に差し迫っていた。
お察しの通り、佐藤さんは毎年欠席。
理由を聞いたことはないがどうせ面倒臭いに違いない。
そして今年も例年通り欠席の返事を頂いた。
これは先週のことだったけど、一応例の告白はされた後である。
「(そこは柴がいるから俺も、とはならないんですねぇ…)」
別に、良いんだけど。
わたしだって会社のひとと飲むのが楽しいわけじゃないが、やはりこういうものは出るべきだと思っている。
そんなこと佐藤さんに言っても無駄だから、言わないけど。
それにわたしは三神くんの上司にあたるわけで、彼の歓迎会に行かないのはやはり非常識だ。
上司なのは佐藤さんも一緒だけど、やはり言わずもがなだ。
「三神くん、今日のお店結構良いところだよ。楽しみだねー」
「……そうですね」
何故かそこにいつもの貼り付けにこにこスマイルはなく、珍しく表情の固い三神くん。
気になって問い掛けてみるも、大丈夫ですの一点張りだった。
……体調が悪いと言う感じでもないし、どうしたんだろう。
そしてその理由は、歓迎会が始まってものの数分で判明した。