佐藤さんは甘くないっ!
「それでは、3ヶ月と短い間ではありますが同じ開発部署の一員として頑張っていきましょう!乾杯!」
第二部署のエース、星川さんが音頭を取って歓迎会は始まった。
星川さんは確か佐藤さんたちのひとつ上で、宇佐野さんのライバルだと聞いたことがある。
黒髪のさっぱりしたスポーツ刈りが女子にウケているようで、そこそこモテるそうだ。
律香は黒髪なら断然佐藤さんだし、茶髪なら宇佐野さんだといつも言ってるけど。
そして気付けば席がなんとなく固まっていて、星川さんや宇佐野さんの周りには女子が群がっている。
……さすが、女子は手が早い。
くるりと辺りを見渡すと、三神くんはジョッキを片手に厳しい顔をしていた。
どうしたんだろう?
なんとなく気になって隣に座ると、同じタイミングでもうひとり、反対側に腰を下ろした。
「初めまして、柴先輩。お噂はかねがね」
「初めまして……えっと、高野くんだよね?」
一応研修生の名前だけは頭に入れてきたので、それが第三部署の研修生、高野(こうの)くんだとすぐにわかった。
三神くんは嫌そうな顔で高野くんを横目に見ている。
爽やかスマイルはどこへ行ってしまったのだろうか。
というか、一体わたしのどんな噂が彼の耳に届いてしまったのか気になる。
「いいなぁ三神、こんな綺麗な先輩の元で働けるなんて」
「鬱陶しいからどっかに行け」
「はぁ、お前はつれないやつだな。同期には優しくしろよ」
三神くんは腹黒全開スタイルで、高野くんを追い払うようにしっしっと手を返した。
意外だ。あの顔は会社では隠しているのかと思ったのに。
「柴先輩はお酒飲まれるんですか?」
「まあまあ、かな。結構好きだよ」
さすがに初対面で酒飲みだとは言いにくい。
ちょっと濁すように答えると、高野くんはぱあっと表情を明るくした。
「じゃあいっぱい飲みましょう!僕も結構好きなんですよ!」
三神くんとはタイプが違うけど、彼も社交性が高くコミュニケーション能力がとても高い。
もう一度乾杯しましょう、と言われてわたしもジョッキを掲げた。