佐藤さんは甘くないっ!
ふふふ、と嬉しそうに無邪気な笑みを零す三神くんに殺意しか沸かない。
いくら酔っ払いとはいえ、いくら可愛い後輩とはいえ…!!
そんなわたしを余所に、三神くんはまたどこからかピッチャーを調達していた。
初めは高野くんにキス…そして今の行為……これは酔っ払うにつれて加速する恐れがあるのでは…。
さすがにこれ以上はまずい!
「三神くん、それ以上飲まないで!お酒禁止!」
「ええええー!いやれすよおー!おさけほしいー!」
さっきまでの艶めかしい表情から一転、また子供っぽい表情に戻っていた。
ほっと一息吐くも、心臓はまだ落ち着きを取り戻せてはいなかった。
……びっくりした。あんな顔、するから。
佐藤さんに告白されたときみたいな、あの少し悲しそうな顔。
まさか……そんなはず、ないよね。
「ぷはぁー!おさけおいしいれすねー!」
なんて考えている間に三神くんはごくごくと咽喉を鳴らしていた。
ああああー!こらー!!
これ以上のことされたらさすがに対応できないし何より佐藤さんに顔向けできないからやめてくれ!!
ていうか知られたら殺されるのは三神くんだよ!!
「ちょーっとその手を放そうか!ね!!」
「いやれすよーきょうはのみかいれすものー」
「そりゃそうだけど!三神くんはジュース飲もう!」
「ぼくはあ、おさけぇ、よわくなんかないんれすよおー!!しばせんぱあい!!!」
「わかったから!わかったからそれ以上飲まないで!!!!」
ぐでんぐでんに酔っ払った三神くんは、もはやわたしの知る三神くんではなかった。
いつもと違う表情どころの騒ぎではない。
ここまでぶっ壊れてしまったひとを見たのは久しぶりだし、そうそう見たいものじゃない。
アルコール以外の理由で痛む頭を抱える。
やっとジョッキを置いたかと思えばわたしの膝に転がってくる彼は、顔を真っ赤にしてとても楽しそうだった。