佐藤さんは甘くないっ!
―――佐藤さんと出会ったときの第一印象はそれはもう最悪だった。
「今日からこちらの部署に配属されました!柴郁巳(しばいくみ)です!よろしくお願いします!!」
わたしと同じく新卒で入社した数人と共に挨拶をし終えたところだった。
どきどきと心臓が高鳴って苦しい。
念願の会社で働くことができる喜びに、まだ、あのときは浸っていた。
「じゃあ君は……」
次々に新入社員の担当者が決められていく。
初めの数か月はそのひとの元で仕事を学ばせて頂くというシステムだった。
いきなりひとりで投げ出されないことに少しの安堵を感じていたが、……甘かった。
「柴さんの担当は佐藤くん、君にお願いするよ」
呑気で間抜けな部長は二年前から変わっていない。
どうして、あの佐藤さんなんかに、後輩の面倒を任せたのか。
わたしは今でも根に持っている。
「はぁ?嫌ですよ、面倒臭い」
佐藤と呼ばれたその男の人は、振り返りもせず背中を向けたまま答えた。
……仮にも部長はこのひとの上司のはず、なんだけど。
その口の利き方は許されているんですか……!?
社会の仕組みがよく解らなくて、さらに驚きすぎて言葉も出ない。
「そんなこと言わないでよー大きいプロジェクト終わって暇でしょー?」
部長もなんなんだ、そのゆるゆるな頼み方は。
オフィスの方々も皆同じように微妙な表情をして固まっている。
そもそも佐藤さん、とは一体どんなひとなんだろう……。