佐藤さんは甘くないっ!

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―――


「……ねえ、どうしたの?大丈夫?」


仕事帰り、道端で蹲っている男の子がいた。

最初は倒れているのかと思ってびっくりしたけど、荒い呼吸が聞こえたので死んではいないようだった。

金色のつんつんした髪が印象的で、夜道でも随分と目立っていた。

今思うとわたしは不用心すぎたのかもしれないけど、なんだか捨てられた犬のように小さく見えたその背中から、悪い人だとは思えなかった。

目線を合わせるようにしゃがみ込むと、肺の奥までお酒の匂いが充満した。


「どれだけ飲んだの……。立てる?」

「…………ぎもぢ、わる………おえっ」


泣きそうな声と同時に、排水溝に向かってリバース。

驚く暇もなく、わたしは静かに彼の背中をさすっていた。

胃の中が空っぽになったんじゃないかってくらい吐き続けて、おもむろに彼は青白い顔で振り返った。

耳にはピアスが何個か空いている。

電柱の灯りに照らされた顔は整っていて、丸っこい瞳が印象的だった。


「……すみません、でした」


随分と沈んだ声だった。

ここまで吐いたのは初めてだったのかもしれない。

ちょっと待ってて、と声を掛けて近くの自販機で水を2本買った。


「水、飲めるだけ飲んで」


蓋を開けたペットボトルを渡すと、何度かそれで口を濯いだ後、ごくごくと咽喉を鳴らして飲んでいた。

ペットボトルがあっという間に空になる。

それじゃあもう1本、と渡すと彼はそれで熱を冷ますように首筋に押し当てていた。


「何があったか知らないけど、ひとりで帰れなくなるまで飲んじゃだめだよ」


彼は無言で頭を縦に振り、それきり沈黙が続いた。
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