佐藤さんは甘くないっ!
そこでやっとこちらを向いた佐藤さんと目が合った。
ばちりと、火花が立ちそうな鋭い眼光に思わず息を呑む。
「(………かっこいい、)」
本当にムカつくけど二年前から変わらず、佐藤さんは別格にかっこよかった。
今にも誰かを射殺さんばかりの切れ長の瞳。
すらりと嫌味なくらい整った鼻筋に、冷酷さを感じる薄い唇。
黒髪は無造作だけど清潔感がある。
身長は威圧的な程に高く、平均身長以下のわたしを見下すようだった。
「…………」
「……あ、あのっ…」
じろりと蛇に睨まれたような気分のまま震える声を発した。
なんだこのひと顔はかっこいいのにめちゃくちゃ怖いし目付きが殺人鬼みたい。
強面というか、もはや感情がないというか。
嫌がってるみたいだしぜひ担当は他の方にお願いします!!
と心の中で叫んでいるときだった。
「俺は新卒だからって甘やかさない。佐藤馨だ。仕事の効率下げたら殺す」
以上、と言わんばかりに佐藤さんは踵を返してオフィスを出て行ってしまった。
誰も引き留めることなく、一様に彼の背中を見送る形になった。
………え…え………えええええっ!?
なにこれ担当に決まっちゃった感じなの!?
嫌です!!わたし嫌ですよあんな上司!!!!
部長に抗議をしようとした瞬間、周りがどっと騒がしくなった。
なぜかオフィス全体が異常な盛り上がりを見せていて、わたしは恐怖と困惑の入り混じった表情のまま立ち尽くしていた。
「すげー!あの佐藤さんが後輩の面倒見るなんて!」
「珍しすぎるよな!機嫌良かったのかな?」
「プロジェクト成功したからかもな!」
……ど、どうしてみなさん、そんな楽しそうなんですか?