佐藤さんは甘くないっ!

……三神くんが解らない。

自意識過剰なのかもしれない、いや寧ろそうであって欲しい。

それだったら、このばか柴!調子に乗ってんなよ!ばーかばーか!という話で済む。

だけど酔っていたとはいえ、嫌でも昨日の三神くんの言動とリンクしてしまう。

というか今さらだけど、昨日のあれこれは本当に恥ずかしい。

ゆ、指を舐められたりとか……普通はしないと思う……いや…三神くんは酔っ払うと何するか解らないところがあるけど……けど……。

でも高野くんにキスしてたし……もしかしてあれが三神くんにとっての普通…?

もう訳が解らなくなってきた。

あのあとも、酔いが醒めたので送りますよ、と家まで送り届けられてしまったし。

介抱したわたしが送られてどうするんだ?と思ったけど、なんだか断れなかった。

宇佐野さんがこっちは気にしなくて良いから帰っていいよ、とメールをくれたので挨拶もできないまま帰ってきてしまったけど、本当に大丈夫だったのだろうか。

……色んなことが頭の中でぐちゃぐちゃになっている。

佐藤さんのときだって色々悩んで、なんとか最近落ち着いてきたのに。


「……憂鬱だなぁ」

「何がだ」

「いやそれは……って、え?」


聞きなれた声に驚いて光速で顔を上げると、目の前に立っていたのはやはり佐藤さんだった。

さーっと音を立てて全身の血の気が引いて行く。

仕事を抜け出してさぼっているところを見られてしまった。

さらに謎の独り言を聞かれてしまった。

……もう終わりだ…!
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