佐藤さんは甘くないっ!
嫌でも視界に飛び込んでくるのは、同じ女性としての敗北感。
胸の辺りまである長い茶髪はくるくるとウェーブしていて、上品な雰囲気が出ている。
真っ赤な口紅が嫌味なくらいよく似合っていた。
身体にぴったりのワンピースが、スタイルの良さをはっきりと映し出している。
わたしも同じようにワンピースを着ているのに全然違うものに見えた。
大きな瞳に鼻筋が通っていて、モデルだと言われても納得してしまう程だ。
佐藤さんのご家族かな、
なんて、現実逃避の言葉に過ぎなかった。
一目見たときから嫌な予感がしていた。
それが確信に結び付いたのは、わたしに向けられた敵意の視線。
何よりもの証拠は佐藤さんの部屋のカードキーを持っていることだった。
作るのに時間がかかるという、あの特注のカードキー。
「ねえ、どちら様って聞いているんだけど」
美人にぴったりの吊り上がった双眸から鋭い眼光が向けられる。
蛇に睨まれた蛙、なんて表現をまた使うことになるなんて。
女性は、何も言わないわたしを面白くなさそうに一瞥して髪をかきあげた。
その仕草すら絵になっていることが不愉快だった。
「わ、たしは……」
―――なんて、言ったらいい?
言いよどむわたしを鼻で笑うと、女性は唇を歪めて言い放った。
「私はね、馨の彼女よ」