佐藤さんは甘くないっ!
目の前が真っ暗になった。
彼女。カノジョ。……かの、じょ。
嘘だって、そんなの有り得ないって言いたいのに、カードキーの存在がそれを許さない。
何も言えずに固まったわたしを見て、女性は大きな溜息を吐いた。
「私は最上麗(もがみうらら)。馨とは4年前から付き合っているわ」
…よ、ねん、まえ。
わたしが入社するよりずっと前だった。
このひとは、わたしよりもずっと佐藤さんと一緒にいたんだ。
そんなに前から……付き合ってたんだ。
「仕事で私はずっと海外にいてね……遠距離恋愛で馨も寂しくなったのかしら。仕方ないわよね、それは私にも責任があることだから許すわ」
淡々と最上さんから告げられる言葉が耳に入ってこない。
寂しくなったから……だからわたしと一緒にいるってこと?
なんでそんな酷いことをさらりと言うんだろう。
言葉が槍の雨となって、わたしの心臓をずぷりと突き刺す。
頭がぼうっとして瞬きすらできないでいた。
最上さんはわたしを射殺しそうな勢いで睨み付けると吐き捨てるように言った。
「でも私は帰ってきた……だからもう、貴女は要らないのよ」
その悪意は、簡単にわたしの心をずたずたに引き裂いた。