佐藤さんは甘くないっ!
ココアを飲んだ所為かもしれない。
いや絶対にその所為だ。
こんなに身体中、発熱したみたいに熱くなるなんて。
「な、なに言ってんの……!」
マグカップを持っている手より、三神くんに触れられている肩の方がずっと熱いなんておかしい。
そんなはずない、はず、なのに。
普通に戻って欲しいって自分が言ったくせに。
わたしは三神くんの上司でいるんだって決めたのに。
なんで急にそんな目でわたしを見るの。
意思とは無関係に、どきどきと心臓が早鐘を打つ。
「……僕はね、柴先輩が思ってるほど良いやつじゃないよ」
三神くんの空いた左手がわたしから無理やりマグカップを取り上げて机に置いた。
コトン、という音がやたらと大きく響く。
どうしたの、なんてありきたりな言葉は声にならずに消えた。
広くてふかふかのソファにゆっくりと押し倒されて、わたしは抵抗もできずにただ三神くんを見つめていた。
身体がどこまでも沈み込んでしまいそうな錯覚を覚える。
それはソファに、じゃなくて、別の何か。
その何かの正体をわたしはとっくに知っている。
「今、何考えてると思う?このまま佐藤さんと別れて、さっさと僕のモノになれば良いのにって考えてる」
三神くんは熱に浮かされた色っぽい眼差しをわたしに向けた。