佐藤さんは甘くないっ!

佐藤さんも三神くんも、どこまでもストレートだ。

……いや、なんで今、佐藤さんのこと思い出すの。

やめてよ。傷付きたくないよ。

だからあの場所から逃げてきたんだよ。

瞬きをすれば目の前には少し怖い顔をした三神くん。

すぐにわたしの心は現実に引き戻されてしまう。

後輩の顔じゃない、男のひとの顔。

あのとき酔っ払った三神くんが垣間見せたあの表情と同じ。


「柴先輩は甘すぎるよ。酔っ払った見ず知らずの男を介抱したり、自分のことを好きな男に抱き付いて助けを求めたり。……その男の家に上がって、シャワーを浴びたり」


急に三神くんの目付きが変わった気がした。

…なんとなく、いつもと違う。

酔っ払ってたあのときとも、なんか違う。

何とも言えない感覚がぞくぞくと背中を這い上がる。

逃げなくちゃって思うのに。

押さえつけられているわけでもないのに、身体が言うことを聞かない。


「……俺なら襲わないとか思ってるなら間違いだから」


三神くんの一人称が俺、になったところを初めて聞いた。

今までも、2年前のあのときもきっと僕、だったのに。

なんでこのタイミングで、そんな風に男のひとの顔を見せるの。

瞬きすらできなくなった。目が逸らせない。

三神くんの顔がゆっくりと近付いてくる。

このままどうなるか解ってる。わかってる、のに。

熱の籠った吐息が、唇に触れた。
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