佐藤さんは甘くないっ!

しかしおめでたい雰囲気も束の間、急に三神くんは呆れたように大きな溜息を吐いた。

驚くほど一瞬で、纏う空気ががらっと変わる。


「それで、柴先輩は本気でその最上なんとかの言葉を信じているわけですか?」


もはや呆れているというより、蔑まれているように感じる。

鋭い視線がぐさぐさとわたしの身体に突き刺さった。

……そんなこと言っても、色々と合致がいくし。

なによりカードキーを持ってたし。

言い訳をする子どものような口調でわたしは呟いた。


「まぁ、呼び方もあれですし、たぶん付き合ってたんでしょうね」


ぐさり。

解ってたことだけど、第三者に認められるのは想像以上にダメージが大きかった。

……あんな綺麗なひとと、付き合ってたなんて。

それでどうしてわたしなんかを選んだんですかって、嫌でも考えてしまう。


「僕が知っている佐藤さんの顔は少ないですけど……本当にあのひとが二股なんてすると思いますか?今まで2年以上傍でずっと見てきた柴先輩から見て、そんな最低な人間でしたか?」


三神くんの言葉はどれもが正しかった。

解ってる。そんなこと、誰よりわたしが解ってる。

だけど、万が一裏切られたら。

億が一にでも、全部全部、嘘だったとしたら。

わたしは冗談抜きで一生人間不信になってしまうだろう。

そうなることが怖かった。

傷付きたくなかった。
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