佐藤さんは甘くないっ!
押し黙るわたしを見て、三神くんはまた雰囲気を緩めた。
「僕としては柴先輩がこのまま佐藤さんのこと嫌いになってくれた方が良いので、これ以上は何も言いませんよ」
…………だからなんで、さらっとそういうこと言うのかな。
三神くんは敵なのか味方なのか解らない。
わたしの背中を押してくれたり、かと思えばあんなことを言ったりする。
なんて返したら良いのか解らなくて、とりあえず苦し紛れにココアを口に運んだ。
温かくて甘い幸せがふわりと広がる。
……わたしはどうしたいんだろう。
佐藤さんに真相を確かめたい。だけど勇気が出ない。
でも、わたしの気持ちは変わってない。
「嫌でも月曜から顔合わせるんですから、週末はゆっくりしたらどうですか?」
コーヒーを淹れ直しながら三神くんが天使のような悪魔のようなことを囁く。
…確かに今すぐ会って話せるほどわたしも落ち着いていない。
最上さんの鋭い眼差しが網膜に焼付いて離れなかった。
あのひとは間違いなく、今でも佐藤さんのことが好きなんだ。
最上さんのことは何も知らないけど、わたしの方が勝っているところなんて思いつかない。
ただ佐藤さんと一緒に過ごせる時間は同じ会社に勤めているわたしの方が多いとは思うけど。
だから最上さんの邪魔が入らないときに佐藤さんとしっかり話したい。
少しだけ決心を固めたわたしを見て三神くんは思い出したように問い掛けた。
「今夜は泊っていきますよね?」